すべてがFになる

kotohirateiji2008-11-12 
著者:森博嗣
書名:すべてがFになる
版元:講談社文庫
 
20世紀末前、事情により幽閉されるように暮らす天才科学者の企て。主人公達は自分の意志で事件に巻き込まれていく。人工現実に目鼻がつくかつかないかの時代に、ハードSFとしてでなく、ミステリーとして仕立て上げられた物語。
 
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「思い出は全部記憶しているけどね、記憶は全部思い出せないんだ」
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人工現実こそが人類の行く末を救うという助教授(主人公)の自論が興味深い。このままつきすすんでハードSFにしちゃえばいいのに、と読みながら物足りなさを感じる場面多し。著者本人はほんとはどちらを書きたいのだろうか、思いながらページをめくる。森博嗣 が30歳前にウィリアム・ギブスンの作品を読んだ時、どんな事を感じたのかな、とか想像しながら読み進める。
 
息子よ。君に父母がいて祖父母がいるように、物語にも歌にも映画にも、人の作り出すものには直接間接のご先祖がいる。ひとつひとつもはそれだけでも立派で楽しいものだが、何が何によって影響をうけたのか、とか考えながら味わうのもまた楽しいものだったりする。だまされたと思って色々な視点でみてごらん、面白いよ。

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)

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