第一阿房列車

kotohirateiji2009-06-13 
著者:内田百間
書名:第一阿房列車
発行:新潮文庫
 
用事もないのに列車で出かける。旅に出るのでない。列車に乗り、好きな酒を呑み、そして宿でまた呑み、帰路もまた呑む。老後なのだからそうして好きにしている。
 
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もっと古い、私などの生まれる前の話しに傘屋の幸兵衛と云う者があって、瓶井の塔から飛行機のような物に乗って空に飛んだそうである。
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百間は岡山生まれ。この傘屋の下りは先日読んだ表具師の幸吉の話しじゃないのと気付く。本を読んでいてこういう繋がりに出会うと何か嬉しい。関係ないと思っていた情報が結びつく時に脳細胞は興奮するというけど、こういう時にそれを実感できる。
話題を戻す。電車の旅はいいね。時刻表をみて綺麗に連絡を繋ぐのも楽しいし、いきあたりばったりで乗り換えの駅で次の列車を待つのもいい。駅弁を買って、ビールを買って、好きな本も1冊もって列車に乗り込む。起きていてもいいし寝てもいい。クルマやバイクの旅もいいけども、列車の旅には列車の旅にしかない喜びがある。世界中で列車に魅せられる人がたくさんいるのにとても共感している。
それにしても内田百間、近影を観たとおりの偏屈ぶり。それでいてこの表紙のコスプレのお茶目さといったら。こんな爺さんになったら周囲から嫌われるんだろうけども、小気味良さには少し憧れてしまう。
 
息子よ、やがてくる君にとっての初めての列車の旅はどう記憶に残るのだろうか。そして自分で乗る事を選び始めるのは幾つになる頃だろう。楽しみにしていて欲しい列車の旅を。

第一阿房列車 (新潮文庫)

第一阿房列車 (新潮文庫)